大判例

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広島高等裁判所 平成4年(行コ)7号 判決

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人らに対して昭和六一年一〇月二七日付でした原判決添付処分一覧表の処分の種類欄記載の各懲戒処分を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨。

第二当事者の主張

当事者の主張は、以下に付加、訂正する以外は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の補正

原判決二枚目裏八行目の「中央郵便局(」の次に「昭和三九年四月二〇日局名改称前は広島郵便局、」を、同四枚目表五行目の「広島郵便局」の次に「(昭和三三年一一月一日局名改称後は広島西郵便局となる。)」を、それぞれ加え、同五枚目表七行目の「後記座り込み闘争」を「後記2、3掲記の座り込み闘争(以下「本件座り込み闘争」といい、対象となった座り込み行為を「本件座り込み」という。)」と改め、同七枚目表七行目の「広島中央局当局」の次に「(以下「当局」ともいう。)」を、同八枚目表一行目の「妨害したため、」の次に「当局は、」を、同九行目の「その後、」の次に「右職員らは、」を、同一二枚目表四行目の「座り込み」の次に「闘争」を、同一五枚目表七行目の「同局構内で」の次に「本件座り込み闘争を」を、同一八枚目表七行目の「であって、」の次に「右退去命令は」を、同裏一行目の「であって、」の次に「右撤去命令は」を、それぞれ加える。

二  控訴人らの当審における補足的主張

1  施設管理権の解釈について

原判決は、「労働組合またはその組合員が使用者の許諾を得ないで企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者の有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保し得るように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動に当たらず、使用者においてその中止、原状回復等必要な指示、命令を発することができるものと解すべきである」と判旨して企業固有の権限とそれに服する労働者の義務を強調した最高裁判所昭和五四年一〇月三〇日第三小法廷判決民集三三巻六号六四七頁の考え方を踏襲するが、右考え方は、使用者である企業が、単に労務管理権や施設管理権などの市民法上の権限を超えて、有機的組織体として包括的な企業秩序の定立と維持に関する固有の権限を有することを前提としているところ、経済的技術的性格を有するにすぎない企業自体に統一的な支配・処分権限を認めることは法的構成として妥当を欠くのみならず、既に克服された経営権概念を復活させるに等しいものであり、他面において労働者の服従義務ないし企業秩序遵守義務を認めることは、対立と結合を含んだ企業内労使関係において使用者の所有権・占有権に基礎を置く施設管理権が一般的制約を受けるものであり、組合活動が憲法上労働者に保障された団結権ないし団体交渉権の行使に該当することを看過するものであり、不当である。

2  懲戒権の濫用について(控訴人伊達工を除くその余の控訴人の主張)

本件処分の対象とされた構内座り込み闘争(本件座り込み闘争)は、昭和六一年八月三〇日の土曜日に、広島中央郵便局(広島中央局)正面の南側利用者出入口脇のお客様周知用掲示板前の構内で実施されたものであり、その位置・態様については、控訴人ら組合役員から組合員に対して右出入口にはみ出さないよう再三にわたり指導していたもので、座り込み自体により被控訴人の業務に支障をきたしたり、第三者に迷惑を及ぼしたことはなく、撤去命令の対象とされた闘争のための横断幕も発令時には既に庁舎敷地内から公道上に移動ずみであり、全逓支部組合員と当局側との間で大声でやり合うようなこともなく、市民からも格別の苦情申出はなかったから、右座り込み闘争は、憲法上保障された団体行動権の行使として勤務時間外の組合員によって整然と平穏に実施された正当な組合活動である。

従って、被控訴人において、控訴人らが、職場秩序を著しく乱し、官職の信用を傷つけ、官職全体の不名誉となる行為をしたとしてなされた本件処分は、客観性・正当性を欠く処分といわざるを得ず、また、従前、反マル生闘争時に実施された本件より大規模かつ長時間にわたる構内座り込み闘争について関係者に対して何ら処分がなされなかったことと対比しても、懲戒権の濫用にあたり無効というべきである。

三  被控訴人の反論

本件座り込み闘争は当日午前九時頃から午後五時四〇分頃まで広島中央局正面の南側利用者出入口脇の掲示板付近で実施されたが、実施された時間帯で何人かが出入口付近にはみ出し、午後五時頃にそのはみ出しが一番激しかったものであり、右闘争場所が幹線道路である国道に面し、付近に市役所、区役所、会社が多数存在し、商店街やバス・電車の停留所にも近く、郵便局利用者を含めた通行人も非常に多かったから、庁舎敷地内の支柱に張り渡された横断幕により掲示物が見えなくなったことはもとより、多数の組合員による本件座り込み闘争を見て現場を迂回して通行する通行人も増えて前記掲示板がその効用を果たさず、業務に支障をきたしたことは明らかであって、他面、通行人が予め本件座り込み闘争をみて迂回したため結果としてトラブルが生じなかったにすぎないから、右闘争を指導した控訴人らに対してなされた本件処分は相当である。

第三証拠関係

本件記録中の原審における書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。

理由

一  当裁判所も被控訴人が控訴人らに対してなした本件処分は適法であって控訴人らの本訴請求は理由がないと判断するが、その理由は、以下に付加、訂正する以外は原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決五四枚目表五行目の「午後五時二五分頃、」を「午後五時三五分頃」と改め、同五五枚目表九行目の「庁舎管理規程」の次に「(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号)」を、同五六枚目表五行目の「規則」の次に「昭和三〇年二月二〇日公達第一六号)」を、それぞれ加える。

2  同五七枚目表六行目の次に改行のうえ次のとおり加える。

「この点に関し、控訴人らは、企業自体に統一的な支配・処分権限を認めることは法的構成として妥当を欠くのみならず、既に克服された経営権概念を復活させるに等しく、また、労働者の服従義務ないし企業秩序遵守義務を認めることは、対立と結合を含んだ企業内労使関係において使用者の所有権・占有権に基礎を置く施設管理権が一般的制約を受けるものであり、組合活動が憲法上労働者に保障された団結権ないし団体交渉権の行使に該当することを看過するもので不当である旨主張するが、企業はその人的要素である構成員及び物的施設を統合して存立目的を達成すべく活動するものであり、そのために企業秩序を定立していることを認めることは法的概念としても相当であって、労働組合又はその組合員であっても当然には企業の所有・管理する物的施設の利用権を有するものではないから、使用者である企業の許諾を得ないでその物的施設を利用した場合に違反者に企業秩序に反するとして懲戒処分を行うこともできるというべきであり、このように解したからといって、憲法上、勤労者の団結権が保障されていることを看過したものとはいえないから、控訴人らの右主張は採用できない。」

3  同五九枚目裏五行目の「右一三条の規定」を「右就業規則一三条、庁舎管理規程三条、一一条の規定」と改める。

二  結論

よって、控訴人らの請求は理由がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条、九三条一項本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 新海順次 裁判官 古川行男 裁判官 岡原剛)

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